日本語が、大好きです。(Sorry, Japanese Only.)
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 異様としか言いようがない。時にそう思う事がる。今がそうだ。お昼休みの食堂のカレーコーナ。そこに並ぶ20代、30代、ともすれば40代のいいオヤジがそろいもそろって注文時に「やわらかおにく」という単語を吐いているのだ。これは異様としかいいようがない。メニューは「やわらかお肉のポークカレー」。なんだ普通に「ポークカレー」って注文でいいんじゃないのか。こいつらそんなに「やわらかおにく」と言いたいのか、言いたいだけなのか。いやいやそんな事はないだろう。なぜなら「やわらかおにく」なのだ。「牛肉の」とか「豚肉の」とかじゃない、「やわらかおにく」なのだ。根拠は無い。根拠はないが確信はある。これは、社会人がおいそれと口にして良い言葉ではない。例えばそう、あなたの父、尊敬するあなたの父親が、家族の集まる食卓で母と話す。「父さん、今日の夕ご飯、何にしたらよろしいですか」。家族の目が父親に集まる。子供たちが期待の目を向ける。そこで父が今まで読んでいた新聞から顔を出し、ちょっとこうべを上げ、最近蓄え始めた口ひげをもごもご動かして言うのだ。






『そうだなあ、やわらかおにくのポークカレーがいいなぁ』



 あり得ない。なんかここの括弧の中だけ1オクターブ上がってる気がする。父親のこんな姿を見せられたら、子供はもう噴飯ものだ。まだご飯前だけど。そんな父を尊敬できるか。できるわけがない。もう嫌だ、グレてやる。そういや最近『グレる』なんて言葉、とんと聞かないがグレてやる。いや『最近とんと』も聞かなくなったな。世の中どうにも死語だらけだ。良い言葉はどんどん死んでいく。それでも『やわらかおにく』は生き残るのか。なぜこうまでサラリーマンにフィーチャされるのか。こんな日本に誰がした。アレか、構造改革か?構造改革のたまものなのか。あのドクターマシリトの功績が『やわらかおにく』なのか。ふざけるな。税金を上げ、金利を下げ、格差を広げた結果が『やわらかおにく』とは何事か。こんな社会、こっちから願い下げだ。何が構造改革だ!!私は『ポークカレー』を注文するぞ。『やわらかおにく』とか言ってるナヨナヨしたオヤジどもを尻目に『ポークカレー』と宣言する。そして日本を変えてやる!!私は決意を持ってカウンタの前に立つ。そして、改めてメニューを見た。そこには「やわらかおにくのポークカレー」とは別の、ちょっと値段を下げたもう一つのカレーメニューがあった。



「おすすめポークカレー」





食堂のおばちゃん:お兄さん、なににするんだい
ここう:え、あ、あのっ、こっち(やわらかおにくのポークカレーを指す)
お:どっち?
こ:いや、だから、こっち…
お:だから、「こっち」じゃわかんないよ。メニュー読めないの?
こ:ええっ、えっと、「おすすめ」じゃ無い方。(汗だく)
お:おすすめじゃないカレーって、ウチのカレーはそんなにマズイのかい。
こ:いや、そうじゃなくて、こ、こっちのポークカレー…
お:二つともポークカレーだよ。ちゃんとメニューがあるんだから、それ読んでおくれよ。




こ:(泣きながら小声で)やわらかおにく…


お:はいー『やわらかおにくのポークカレー』ありがとうございましたー!(高らかに)





(泣きながら清算)



(席に着く)


(カレー食べる)



(カレーうまーい)





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