そう、僕は海が見たかった。その日何度目かの戦力外通告を受けて遂にぶち切れた僕はそこにあったパイプ椅子を蹴り倒すと、レコーディングルームを飛び出した。こうなったら海だ。センチメンタルジャーニー決め込んで、父の形見の旅行鞄に思い出のレモン石けんを詰め込み飛び乗ったのは宇都宮線。そう、海が見たかった。ただそれだけだったのだ。乗り込んだ車両には「快速ラピット号」の文字が。一緒に乗り合わせたおばあちゃんは、この特急がいかに便利かを述べているのだが終始「快速ラビット号」と言い間違えていた。違う、ウサギじゃないんだ、そうツッコミたい心をぐっとこらえて、車窓から覗く山間の風景を眺めていた。。
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